「学問のすゝめ」

 明治時代に福沢諭吉が『学問のすゝめ』というベストセラーを書きました。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という有名なコピーは、冒頭の一文です。これは単なる前置きで、福沢諭吉が伝えたかったのは、その後の言葉です。

「わたしたちはいま、自分の心身を育て、自分の生き方を自分で決める時期にさしかかっている。強く確固たる意志をもつように努めなさい。勤勉さと強い意志をもって生きるというのは、わたしたちにはいちばん身につけやすい習慣だ」

 厳しい寒冷地の中で育つヒノキは、成長は遅いけれど、年輪の幅が狭い、しっかりした木材になります。一方、温暖な地域で育つヒノキは、成長こそ速いけれど、年輪の幅が広く、あまりよい木材にはなりません。
 人も同じ。これから歩む人生の途上で、何度となく直面する苦難や課題は、すべてが自分の栄養となり、自分の成長につながります。心がしなやかに鍛えられ、人間としていい年輪を刻んでいくのです。

 当たり前でない人生は豊か。悲しみや辛さの前で足を止めるのではなく、やさしくしたたかにどんな世の中でも生き抜く力をもつ。
 いつ来るかわからない「そのとき」まで、こつこつと心をこめて自分を、自分の才能を練り上げていく。それが、今、君たちが毎日取り組んでいる「勉強」なのです。