塾  報

 

塾報NO.33 2024年3月16日号

「口に出す前に,一度その言葉を口の中でかみなさい」


「口に出す前に,一度その言葉を口の中でかむんだよ」

これはわたしが幼いころ,祖母から何度も聞かされた「ことば」です。

 相手のことをよくよく考え,その人の心の機微を読み取ることができる人間になりなさい。不用意に頭に浮かんだことをすぐに口にする無神経でデリカシーのない人になってはいけないと。
 そして,言葉を正しくかむために,自分の気持ちや考えを相手に正確に伝えるためには学を積むだけでなく感性や情緒も磨いておきなさいと。

その昔,江戸時代後期の僧侶,歌人の良寛は,民衆にこう語り続けました。

 「自分の口から出てくる言葉は常に人を安らげるものでありたい。
  人を力づけるものでありたい。
  人を励ますものでありたい。
  人を明るい気持ちにさせるものでありたい。
  自分の口から出てくる言葉は時に人の心を支える贈り物でありたい。
  人を勇気づける贈り物でありたい」と。

 令和を生きるわたしたちが軽んじていることかもしれませんね。
世の中にあふれている雑音や騒音。本当に見たり,聞かねばならない大切な物事や音を見逃したり,聞き逃していないでしょうか。日々,口にする言葉(言霊)を乱暴に扱ってはいないでしょうか。


 

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塾報NO.15 2022年3月10日号

「親を想う」

 人は不完全な状態で生まれてきます。生まれてすぐは、1日に何度も乳を飲み、半年以上も歯が生えず、1年近く自ら立てず、二歳ごろまで言葉が出せず、大人の身体になるのは十数年かかります。
 その間、子どもには言えない苦労をかかえながら、ずっとその弱々しい君を、半人前の君をひとりの人間として育つまで見守ってくれているのが親です。

 「親には、いくつになっても心配されます」
そう話してくれる友人がいます。
 「最近どうなの?」と聞かれ、ちょっと邪険に答える。
 「大丈夫だよ、うまくやってる」

 「なにかあったら、言いなさいよ」
いくつになっても、最後の言葉は同じ。
 きっと自分が寝たきりになったとしても、そう話しかけてくれるでしょう。

 今までたくさんの想い出をもらってきました。
これから、いっしょにいられる時間は、実は、そんなにながくありません。

学業が一区切りつくこの春から、今度は君が、生涯忘れることができない楽しい思い出をたくさんつくってあげてくださいね。そして、なにかあった時に強く支えてあげられる智力と優しさを蓄えていきましょう。




塾報NO.4 2021年2月号

中学生になる君たちへ「顔をあげましょう」

明治時代に福沢諭吉が『学問のすゝめ』というベストセラーを書きました。これにはどういうことが書いてあるのでしょうか。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という有名なコピーは、冒頭の一文です。これは単なる前置きで、福沢諭吉が伝えたかったのは、その後の言葉です。

「わたしたちはいま、自分の心身を育て、自分の生き方を自分で決める時期にさしかかっている。強く確固たる意志をもつように努めなさい。勤勉さと意志をもって生きるというのは、われわれにはいちばん身につけやすい習慣だ」

きみたちも、いよいよ中学生となります。その歳なら人生という言葉すら、思い浮かべたことがないかもしれませんね。でも、この時期は学齢期といって、心身ともに自らを大きく成長させるとても大切な時間なのです。これから、勉強や自分とどう向き合っていくかで、その先に続く道がすこしずつ開き、そして広がっていきます。

肌身はなさず?持ち歩く、そのケイタイを置きなさい。インターネットを閉じなさい。テレビを消しなさい。まずは、静かに今の自分を見つめることです。
大人とは、一人できちんと歩き、自分と、その周りにいる人にちゃんと目をむけ、いつでも他人に手を差しのべられる力と愛情をもつ人です。
これから歩む人生の途上で、何度となく直面する苦難や試練になえることなく、顔を上げて立ち向かっていけるタフで丈夫な心の持ち主になることです。

この春から、いよいよ中学生です。
しっかり大地に足をつけて、背筋を伸ばし歩いていきましょう。